シューズブランドの百貨店での販売方法について


シューズや靴、スポーツ関連で百貨店での取引がありましたが、他の流通と異なる点が多いのが百貨店での販売です。

一通りの流れが分かるようにまとめましたので、ご参考にしてください。

『百貨店ビジネスのコツ』

~靴メーカー側から見た百貨店での販売について~


べストアソートコンサルティング代表下山が案件を調査しながら考えたことを発信します。今回は、メーカー側から見た百貨店での販売方法についてです。

私は長い間メーカーやブランド側で働いていましたが、百貨店の商習慣に戸惑うことが度々ありました。そこで私が戸惑ったことを中心にメーカー、ブランド、輸入業者などの立場から見た百貨店での販売方法について説明したいと思います。靴メーカーでの経験ですが、の多くの商品にもほぼそのまま適用できると思います。

ご参考になれば幸いです。


1.百貨店とは?

 最初に百貨店とは、伊勢丹や三越、高島屋などに代表される商業施設で『生活が豊かになるために、様々な商品を取りそろえてくれるところ』です。「衣・食・住の商品群のそれぞれが10%以上70%未満を扱い、売り場面積の50%以上において対面販売を行う業態」(商業統計)と定義されています。

 ルミネとか、パルコなどのショピングセンター(SC)との違いは、SCは『ショッピングテナント』になります。『テナント』は、SCという建物に入る小売店のことです。商品は、館に入るテナントが商品を取り揃えていますが、百貨店では百貨店が揃えています。

ちなみにショッピングセンターの定義は、一つの単位として計画、開発、所有、管理運営される商業・サービ ス施設の集合体 で、駐車場を備えるものを言います。


詳細については、日本ショッピングセンター協会 <http://www.jcsc.or.jp/sc_data/data/definition>

2.取引条件は?

 メーカー側にとって百貨店との取引条件を決める上で、大きく3つの要素を考慮する必要があります。

一つは、買取か消化か、返品があるかないか、という点。二つ目は、メーカー側が販売員を派遣する必要があるのか、という点。最後は掛け率です。掛け率は、先の2つの条件によって大きく変わり、互いにメリットが出るところで売買契約を結ぶ必要があります。

 

 一般のお店であれば、お店に売ってしまえば、あとはお店の店員さんが商品を売ってくれます。しかし、百貨店では、その「店員さん」を自社から派遣しなければいけないことも多く、その為に人を雇うので予想外のお金がかかりますので、特に注意が必要です。

 百貨店との取引で分かりにくいのは、商品納品時に『買取』と『消化』という大きく異なる取引形態があることです。

 『買取』:商品をメーカーや輸入代理店、卸業者から購入して仕入れすること

 『消化』:消化仕入れ、もしくは『売上仕入』(ウリシ)とも言い、百貨店に来店されたお客様が商品を購入して、初めてメーカー等から仕入が発生する仕組み


(細かく分けると『委託』または返品条件付き買取りや、現在ではテナント形式の賃貸借契約などもあります。さらに、買取や委託であっても、支払期日に百貨店は全額支払わずに代金の一部のみを支払う「支払い保留」という条件を入れることもあります。この保留された分は、シーズン後に返品が発生した時の赤残を回避するためにも使えます。カード会員やクーポン値引きなどの際にも利用できるので、使い方によっては、両者にとって便利な条件です。)


 『買取』契約では、メーカー側(輸入代理店、卸業者等を含む)にとっては、納品時点に売上が計上出来て安心です。百貨店にとっては商品を買い取るため、売れ残るリスクがあります。

 『消化』は、メーカーから見ると、商品が百貨店に納品されても、レジが鳴るまでお金が全く入ってこない取引形態です。世界でも稀な取引形態なので、ほとんどの外国人に理解されていません。外資系企業の日本人営業マンが本国に説明する時に苦労する点です。海外本社のグローバル企業では、多くの場合、商品が既に納品されているのに売上が立てらない状況に対応する(経理)システムがありません。それほど特殊な商取引だと言えます。

 『消化』契約では、メーカー側は百貨店に商品があっても自社の在庫なので、メーカー主導で商品を店頭に並べることができます。また基本的には、百貨店の了承なしに在庫を移動し、売れている店に在庫を集めることも可能です。つまりメーカー側が在庫を機動的に回すことが出来ます。

 デメリットとしては、メーカー側は百貨店にある(自社にない)在庫の管理をする必要があり、業務が煩雑になる点です。また、売上が上がるのは百貨店に来店したお客様が購入する時なので、出荷と売上のタイミングがかなりズレますので、キャッシュフローという観点でも不利になります。 一方百貨店にとっては、店頭に並んでいる商品が売れ残っても一切リスクがなく、売れてから仕入れするので、何が売れるか予想しにくいこの時代に、百貨店としては有利でしょう。つまり、メーカー側は百貨店との商談をまとめやすい取引条件ということになります。


3.納品時に必要なものは?

 百貨店への納品時には、宅配便のようにただ荷物を送れば良いというわけにはいきません。基本的には、3つのものを準備する必要があります。

 ①百貨店値札(専用値札)

 ②注文伝票

 ③納品伝票(納品書)


一つずつ見ていきましょう。

①百貨店値札

百貨店においてほぼ必須で、しかも各百貨店ごとに異なり、売り場、ブランド、アイテム、サイズなどの独自のコードが必要になります。


②注文伝票(買取のみ)

百貨店からメーカーに注文する伝票です。メーカーにとっては正式に注文を受けた証拠となります。この注文伝票をもとに、納品時の検品が行われます。


③納品伝票

百貨店からの注文に応じてメーカー側が出荷する際に、メーカーの物流倉庫が商品に同梱する納品伝票(納品書)です。消化の場合には注文伝票がないので、メーカーにとっては大切な伝票になります。


参考先サイト センケンJOB <https://job.senken.co.jp/shinsotsu/articles/department-store2018> 日本ショッピングセンター協会 <http://www.jcsc.or.jp/sc_data/data/definition> OTS <http://www.e-ots.jp/blog/archives/110>

4.納品の実際は?

 百貨店への実際の納品作業は、上の3つの伝票などを準備しても、それ以外もかなり煩雑で時間がかかるため、ほとんどのメーカーは納品代行業者を利用しています。百貨店個別の専用伝票発行から百貨店館内の納品まで任せられるので、営業担当者の作業軽減になります。

例)株式会社ワールドサプライ「納品サービス事業」

https://www.world-supply.co.jp/acting-delivery.html

全国の百貨店や大規模小売店の指定配送業者として、集荷・値札加工・検品・配達までを一括代行。 百貨店館内やストックヤードなどの物流サポートも拡大し、販売支援の強化に取り組みます。

例)東京納品代行株式会社「百貨店納品代行」

http://www.tndc.co.jp/

荷主様から百貨店様や売り場様へ至るまでの一貫物流を実現しています。商品集荷から伝票・値札の発行や検品作業、送り状作成、納品等あらゆる納品代行業務に対応しています。


5.納品後の作業は?

 基本的には、納品代行と契約して諸業務を任せてしまえば、買取の契約なら自社倉庫から出荷されれば、売上が計上されます。

しかし、消化や委託(返品条件付き買取り)の場合には、メーカー側が一つでも多く売って納品した商品が残らないようにする必要があります。ここでは以下のようなポイントがあります。

 ①ディスプレイ

 ②販売員への商品説明

 ③売れ行き状況の確認

 ④クリアランスの調整

 ⑤返品の調整


では、一つずつ解説します。

①ディスプレイ(シーズン準備期)

商品がお客様の目に留まるように、少しでも良い場所を確保する必要があります。

これは百貨店側の業務のようですが、実際には皆さんとても忙しいので、メーカーで納品日に行って、売れる売り場を作ることが大切です。またこういう地味な作業をしっかりすると、売場での評価も上がり、売場に顔を出さないブランドを押しのけて、良い場所を取れる、ということも起きます。

また、事前に百貨店側と使用可能なPOPなどブランドツール類を確認しておくも大切です。ブランド訴求の出来栄えが売れ行きを左右するでしょう。

②販売員への商品説明(シーズン初期)

店頭に立つ社員や販売員の方に、少しでも多く売ってもらうためには、マニュアルを渡すだけではなく、しっかりと説明する必要があります。メーカーが気合を入れて作った商品なら、ここでも気合を入れて関係者全員に、しっかりと丁寧な説明をすることが売り上げを左右します。

特に自社が派遣する販売員であれば、完全に理解してもらえるまで教育を施し、人間関係も良好にして、やる気を上げることです。館ではブランドの顔になる人ですから、百貨店社員の方に質問を受けた時に、正確に答えられるようにしたいですね。それが売り場でのリアルな評価を上げることになります。

③売れ行き状況の確認(シーズン中期)

買取であっても、在庫がたくさん残ってしまえば、次のシーズンの受注は厳しくなります。逆に非常によく売れている時にタイムリーに情報を取れれば、追加注文を取って売り上げを伸ばすことも可能です。バイヤーや売り場の方々と連絡を取り合って、タイムリーな情報をつかみましょう。

④クリアランスの調整(シーズン後期)

納品した商品を完全に売り切るためには、ほとんどの場合、クリアランスセールは避けて通れないと思います。百貨店で行うクリアランスセールの時期に、メーカーとしてどのように対応をするのか、早い時期に話し合いをする必要があります。

特に百貨店以外に商品が流通している場合、クリアランス対象品番や値引き率については、他の流通と問題が起きないように細かく気を配り、決める必要があります。

⑤返品の調整(シーズン終了期)

消化、委託の場合にはシーズン終了時に残っている在庫を引き取る必要があります。

シーズン終了後に、次のシーズンにも継続する商品があれば、継続と非継続の商品を分けて管理する必要もあります。実際に出向き実地棚卸をしてから返品伝票を切るのが良いと思います。その際には、売場で次のシーズンに繋がるような情報を現場で得ることがお勧めです。

以上、返品が終わればシーズン終了となります。

契約条件にかかわらず、納品したものが早い時期にきれいに売れていくのが理想です。一発で大きな受注を取って納品して「はい終わり」ではなく、しっかりと売り切って、徐々にビジネスを拡大させることが理想的です。


以上